J1清水エスパルス 残留優先 長期展望失う【オレンジの難路㊥】

J1清水エスパルス 残留優先 長期展望失う【オレンジの難路㊥】
11月4日、ロティーナ前監督の解任に伴い、オンラインで会見した清水の大熊清ゼネラルマネジャー(GM)は、苦渋の表情を浮かべていた。「継続か変化かという中で、変化を決断した。今季の大切さを考えた」。直近の3連敗で順位はJ2降格圏一歩手前の16位。J1残留という最優先事項を前に、クラブとして3年連続となるシーズン途中の監督交代を選んだ。 今季就任したロティーナ前監督は大熊GMの主導で招いた。2019年にJ1C大阪で監督とフロント責任者の間柄だった2人。20年末にスペイン人指揮官のC大阪との契約が満了になると、声を掛けて呼び寄せた。ロティーナ氏と清水の契約は1年だったが、クラブは来季以降の更新も見据えていた。大きな決断によって、長期の展望が消えた。
 シーズン途中、ある選手はこう語気を強めた。「苦しい時に監督や選手を替えているのがここ数年の出来事。一向に前に進んでいない。結果が出ない時に踏ん張って来年以降につなげていくことが大事」。思いは今季も届かなかった。
 振り返れば、昨季からの継続性も曖昧だった。クラブは攻守に主導権を握るサッカーの継承をロティーナ氏招へいの理由の一つとした。しかし、理念を具現化するために求められるプレーは「去年自分自身やチームがチャレンジしていたことと本当に対極」とMF竹内。既存の選手は大きな転換を求められた。
 さらに、開幕前の大胆な選手獲得と夏の補強で今季の新加入は16人。選手の半分近くが入れ替わった。9月のリーグ第28節鳥栖戦では、2年目のブラジル人DFヴァウドを除く先発10人が加入1年未満の選手。昨季のチームの面影はなかった。
 残留を決めた最終節の試合後、来季に向けて必要なことを尋ねられたDF鈴木義は、「まずはクラブとしてどういうサッカーを目指すかという意思表示をすべき」と語った。チームづくりの展望が、再び問われている。
<おわり>