J1清水エスパルス チームの底上げ停滞 能力生かした構成が鍵【オレンジの難路㊦】

J1清水エスパルス チームの底上げ停滞 能力生かした構成が鍵【オレンジの難路㊦】
強敵鹿島と対戦した今季開幕戦。大型補強で獲得した選手7人が先発を飾ったが、逆転勝利に貢献したのは、途中出場したFW後藤やMF河井といったこれまでいた選手だった。「競争と協調」(大熊清ゼネラルマネジャー)によるチームの底上げに期待を抱かせるスタートを切った。 ところが、既存の選手はリーグ中盤戦を過ぎる頃には出番を減らしていった。要因は夏に敢行された5人の追加補強。クラブは巻き返しの策として個の力に目を向け、ロティーナ前監督も新戦力を戦術理解もままならない状態で次々と起用した。後藤や河井、MF宮本らはベンチを外れるようになり、競争力は十分に働かなくなった。
 チームの軸になることが望まれる若手や中堅の生え抜き選手も苦しんだ。前監督は前線の選手に個人で局面を打開する能力を求めた。役割が変化し、昨季は全34試合に出場したMF西沢はプレー時間が半減。連係の中で個性を発揮するMF金子は、出番が遠ざかる中でJ2磐田への期限付き移籍を選んだ。
 クラブが強化をうたう育成面も停滞した。1年目のMF成岡は早くも夏にJ2のクラブに期限付き移籍した。昨季は清水ユース所属のままリーグ戦9試合に出場した有望株だったが、前監督の下では出場機会を与えられず。新天地では主力としてフル回転した。
 昨年、クラブは下部組織全体の育成指針を構築。トップチームの下部組織出身者の構成比を5割とする将来像を描いた。しかし、活躍の場を得られない今季の現状には、ユース出身の選手から「トップチームと下部組織のやっているサッカーが全く別。何のための育成なのか」と嘆きの声も聞こえた。
 残り4試合で指揮を託されたクラブOBの平岡監督は、選手の特徴を生かすことを信条に采配を振るい、ユース出身のMF滝や西沢、加入3年目のMF中村らが輝きを放った。来季はクラブ創設30周年を迎える。唯一の市民クラブとしてJリーグ開幕初年度から加わった清水は、地元出身者を中心にチームを構成し、選手を育て、歴史を築いてきた。負けなしで今季を締めくくった4試合の戦いに、進むべき道の鍵がある。
<おわり>