第100回高校サッカー選手権を見終えて

地上波で放送されていることもあり、冬の風物詩と言っても過言ではない大会となっている高校サッカー選手権(以下選手権)ですが、今大会も終わりました。 無事に終わったと書きたかったところですが、関東第一がコロナの感染者が出たために準決勝を辞退するという事態になってしまい、そういう締めくくりはできない大会となってしまいました。 私は毎年見たり見なかったりなのですが、今大会は磐田に内定している古川くん目当てで静岡学園とこの年代の王者といっても過言ではない青森山田の試合を見ました。 見終えた後に感じることもあったので、感想を残しておこうかと思います。 古川陽介 左サイドを主戦場に得意のドリブルを武器にこの大会で名を上げた一人かと思います。キレキレのドリブラーというよりも、ヌルヌルとした感じのドリブラーで、プロの選手でいうとマフレズっぽいなと思いました。キックモーションからの足裏でのフェイントはプロレベルで通用しそうな感じはしました。 ただ、選手権を見ていて感じたのは、地域毎のレベル差はかなりあり、古川くんの名を上げたプレーの一つである宮崎日大戦のドリブルからのゴールは、古川くんの凄さはもちろんあるのですが、それ以上にチームや個のレベル差がかなりあるから生まれたプレーだと個人的に思っているので、このプレーだけで過度な期待をするのは違うかなと思いました。 プロ内定者と騒がれ、選手権で活躍しながらもプロに入ったらその存在を忘れられていくというパターンは、珍しいことではありません。 現実的には難しいこととはわかっていながらも、高卒でプロに進む選手はみんないいキャリアを築いてほしいと思っています。まして、磐田を選んでくれた選手に対してのその気持ちはより強いです。 残念ながら、ここ最近の磐田はトップ昇格や高卒で入った選手をうまく育て切れているとは言えない状況です。世界的に10代でチームの主力になる選手が珍しくなくなってきたとはいえ、アマチュアからプロの世界に入った選手が1年目からメンバー入りするだけでも簡単なことではありません。 やっとというか磐田も期限付き移籍や育成型移籍を使って、若手の選手を少しでも試合に出れる可能性の高いチームに移籍させて、レベルアップして磐田に戻ってきてもらうということをし始めたので、古川くんやトップ昇格した藤原くんも、状況次第では1年目から外に出すということも考えていてほしいなと思いました。 青森山田 今大会優勝したのは青森山田でした。 その強さは”圧倒的”と言って過言でなかったと思います。よく強さについて”柔”と”剛”に分けられたりしますが、青森山田の強さは剛でした(青森山田の強さは剛であると書きましたが、青森山田の選手がボールスキルなどが下手という意味ではなく、強さのバランスとして剛の部分が目立っていたという意味です)。 フットボールにおける剛の強さは、インテンシティ(強度)と呼ばれる部分かと思います。青森山田はその部分において圧倒的でした。 デュエルはほぼ勝つし、トランジションの部分も非常に早いです。また、それらの強度を90分続けるところが青森山田の凄さです。 これらのことを実行するためには当然屈強の肉体が必要とされるのですが、選手個々の体つきを見ても、明らかに他のチームとは鍛え方が違うのもわかります。 先に地域によってのレベル差は感じると書きましたが、決勝の相手はプレミアリーグWESTに所属する大津でした。そんな大津をもってしても、90分をシュート0で終えてしまうという衝撃の結果で今大会を終えることになりました。 私は今大会の青森山田の試合を見て、その対戦相手の様子を見ていて、日本人選手が海外に移籍したときにぶつかる壁はこんな感じなのかもしれないと思いました。 青森山田を相手にするとその圧倒的なゲーム強度の前にやりたいことをやらせてもらえない状況に陥っていました。 日本はボールスキルの高さがフットボールにおけるスキルにおいて非常に重要視される傾向があります。しかし、近年において内田篤人や田中碧といった日本トップレベルだった選手や現役選手から”ボールスキルはフットボールのスキルにおいて一つの要素にすぎない”といった意味の発言が出てきました。 レベル差があると書きましたが、選手権に出てくるレベルの選手たちでボールスキルが下手な選手はあまりいないと思います。特に決勝で対戦した大津はその部分”だけ”の比較でいえば大きな差はないと思いますし、対戦は実現しませんでしたが静岡学園はその部分”だけ”で言えば優れているかもしれません。 しかし、決勝で対戦した大津はボールスキルの部分はほとんど発揮できずに90分を終えることになってしまいました。 青森山田のゲーム強度の土俵の上では、ボールスキルだけでは太刀打ちできないのです。 よく海外に行った選手が「(ボールスキルの)うまさだけなら日本人選手の方が上」と言います。しかし、そんな日本人選手みなが海外で活躍できたわけではありません。海外の方がゲーム強度が高く、ボールスキルを発揮する前に潰されてしまいます。日本(Jリーグ)の強度であれば存分に発揮できたボールスキルが出せないのです。 青森山田と対戦したチームが、ボールを奪ってもすぐに一人目のプレッシャーが来て、プレー判断に迷っているとすぐに二人目が来てボールを奪われるという光景を何度と見ました。 青森山田に勝つためには、ボールスキルをもっと尖らす(高める)というのも一つの案として否定はしませんが、このゲーム強度が基準として考えられていくことがベストなのかなと思います。 ちなみにダイジェスト動画を見ただけの印象になってしまうのですが、プレミアリーグで対戦するJリーグの下部組織も青森山田のフィジカルやセットプレーには苦しんでいるようです。 終わりに 本当は青森山田の試合を見ての感想で締めたかったのですが、感想も書き終わるというタイミングでこんな記事が流れてきました。 早熟の子を「神童」と呼ぶ愚行、いつまで続くのか? 小俣よしのぶ(後編) 4年以上前の記事なので、もしかしたら事実がアップデートされている可能性がありますが、それを踏まえて引用しました。
錦織選手が今になってケガがちなのは、成長期に相当の練習量やフィジカルトレーニングを積んでいるからじゃないでしょうか。身体ができあがってない状態で、必要以上にストレスをかけてしまった。それが今となって出てきてしまっているのではないでしょうか。
この記事を読んでいて、単純な疑問が生まれました。 青森山田のトレーニングによる鍛え方はこれに当てはまるのかどうかです。青森山田くらいの負荷のかけ方が別に問題がないのなら、他のチームのトレーニングに改善が必要となってきます。しかし、この年代がやるには負荷が大きすぎるとなれば、私が散々書いたゲーム強度についても考え直さなければいけなくなります。 (青森山田の筋トレ動画を見る限りでは、非科学的にトレーニングをしているわけではなさそうです。) この辺について詳しい方、もしくはこれ関連についてすでに存在する記事を知っている方がいたらTwitterの方で教えてほしいです。 <おわり>