遠州三光祭の不安と安堵

遠州三光祭とは?

8月11日に行われた第26節の鹿島戦、この一戦は「遠州三光祭」という名の夏の大きなイベントとして開催された。

遠州地域といえば「お祭り」。昨年5月に7市1町へと拡大したジュビロ磐田のホームタウンをより盛り上げるため、そして満員のスタジアムで選手たちを後押しするため私達に何ができるかを模索する中で、遠州全体を巻き込んだ新たな「お祭り」を開催することにしました。
ホームタウンの皆様が地元・遠州をもっと誇りに思えるように。老若男女、ジュビロファミリーの誰もが一緒になって熱くなれる「お祭り」を、共に創り上げていきましょう。「いざ、エコパを満員にするに!」

磐田公式HPより引用

ざっくり言ってしまえば、この試合に来てくれれば、試合だけでなく、花火や出店といったお祭り要素も楽しめますよということだ。

1年でJ1に戻ってきたジュビロ磐田は、1試合平均入場者数が1万3197人で、収容可能人数1万5165人の本拠地ヤマハスタジアムは連日ほぼ満員となっている。

 磐田は、ヴィッセル神戸との開幕戦で1万4778人が入り、第19節までに観客数が1万人を割ったのは2試合しかない。第15節の浦和レッズ戦は、エコパスタジアムで開催され、今季最多の2万861人が入った。第26節の鹿島アントラーズ戦もエコパ開催を予定しており、ここでも平均を上げることができそうだ。

今シーズンの前半戦の平均入場者数が約13000人のクラブが約50000人入るキャパの会場でやるということで、力の入れようがわかると思う。

ちなみにアウェイにたくさん来るでお馴染みの浦和戦でも、エコパでやって、なんとか20000人を超えたという感じだ。

(結果的に鹿島戦は32995人だった)

 

試合前の不安

試合の結果はコントロールできるものではない。

レアルマドリードマンチェスターシティといった世界の超一流ばかりが揃っているビッグクラブでも負けることがあるのだ(しかも、その相手が必ずしもビッグクラブではない)。

磐田は中断明けとなった前節新潟戦で、お世辞にも褒められない試合をしてしまった。

アウェイで引き分けという結果だけを見れば悪いものではないが、内容は散々だったようだ。

そこにきて、今節の相手は優勝争いをしている鹿島。

どれだけ試合以外のイベントが楽しくても、試合結果が悪いとネガティブな感情になってしまうのがフットボールというスポーツだ。

もし、結果だけでなく、内容も悪いとなれば、多くのサポをガッカリさせることになってしまう。

もしかしたら、その中には初めて来る人もいるかもしれない。

既存のサポは勝てないことにフラストレーションを溜めている人が少なくないと思う。

新潟戦のような戦いぶりなら、ブーイングが起きてしまうかもしれない。

クラブが大きく力を注いだイベント。

それだけに不安は大きくなっていった。

 

新システムの採用

※無料配信で見たので、見直ししてません(というかできない)。記憶に頼っているので、間違っている可能性が大いにあります。

試合前にスタメンを確認したときは4231かと思った。

松本昌也と平川のどっちがボランチなんだろう?

平川トップ下かな?

金子がトップ下で、平川サイドかな?

くらいが自分の頭の中で考えたことだった。

しかし、蓋を開けてみると、433だった(植村曰く4141だったようだ

ゴメスがアンカーに入り、松本昌也と平川がインテリオールで、金子とジョゼがサイド。

確かに言われてみれば、金子とジョゼのキャラクターを考えると、4141だったなと思う。

彼らはウイングタイプの選手ではない。

 

非保持

磐田の非保持は4141でミドルブロック、もしくはローブロック。

ハイプレスはあまり行わない。

渡邉が鹿島のCBに対してチェイシングすることはあったが、全体で高い位置からプレスを掛けようという意識はそこまで感じなかった。

鹿島が2枚のCBに対して、磐田は1枚のFWしかいないので、どうしても数的不利になってしまう。

しかし、鹿島のCBである植田と関川は、運ぶドリブルが得意でないタイプの選手なので、磐田の2列目以降が動かされる前にボールを手放してくれた。

そのため対角のロングボールであったりが多かったと思う。

もちろんそれに怖さがなかったわけではないが、崩れている状態でパスを出されているわけではなかったので、対応が難しいわけではなかった。

 

保持

鹿島の非保持は442。

磐田はあえて数字にするなら433(いわゆるウイングがサイドにいる433ではない)。

磐田がゴールキックでショートパスからスタートする姿勢を見せると、鹿島は前線からマンツーマンでハメ込もうとしてきた。

鹿島からすれば、前から奪いたいというのもあるが、ロングボールを蹴らせて、空中戦になれば、そちらに分があるということもあるだろう(植田と関川に対して、渡邉1人はややキツイ)。

鹿島の前線が2枚に対して、磐田はゴメスが下がって、数的優位をつくるようにしていた。

個人的には、GKが三浦であることを考えれば、GK+CBで数的優位をつくってほしいと思ったが、そこまでやる余裕はまだなさそうだった。

ゴメスはよく頑張っていたが、ボールの配球に特徴がある選手ではないので、ミスしてはいけない状況でミスすることが何度かあった。

それでいて、自分のパスで局面を打開したがるとこがあるので、難しいパスを選択して、安易に相手にボールを渡すこともあった。

ブスケツやロドリのようなことができればもちろん最高だが、ゴメスはそこが特徴の選手ではない。

奪ったら、近くの選手に預けとけとまでは言わないが、もうちょっとプレー選択が正しくなるといいなと思った。

 

悪くない流れでPKによる失点

中央のスペースを埋めながら、鹿島にチャンスらしいチャンスをつくらせずにゲームは進められていたと思う。

しかし、一つのチャンスからPKが生まれてしまう。

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CBのサイドへのロングボールの配球がうまくいってしまうと、磐田としてはどうしても後手になりやすい(中央を締める意識が高いため)。

後ろ向きに追わないといけない状況にされて、サイドから早いタイミングでクロスを入れられて、対応が完全に後手後手にされてしまった。

PKの判定には賛否あるようだが、角度を変えて見ると、判定を覆すような映像はなかったように感じた。

PK自体は不運と言えばそうなのかもしれないが、これが起きる過程自体はやられるべくしてやられた印象。

 

明暗を分けた、前半終了間際のビッグセーブ

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ATにも突入しようかという時間のビッグセーブ。

ちなみに脇下あたりに飛んでくるシュートに反応するのはかなり難しい。

それをセーブしつつ、二次攻撃もできないところに弾いたのは本当に凄い。

磐田と鹿島の力量を考えると、2点差にされると勝点3を取ることは現実的でなくなってしまう。

もしかしたら選手たちだけでなく、スタジアムの空気も「今日もダメか…」みたいな感じになってしまったかもしれない。

勝ちへの望みを繋ぐ、ビッグセーブだった。

 

CBがボールを運べることの影響力

同点となった1点目において、個人的に注目したいのは鈴木海音のプレーだ。

鈴木海音はビルドアップに特徴がある選手で、ボールを運んだり、体の向きを餌に前向きにボールを刺し込めたりできる。

この1点目の起点は、そんな鈴木海音のドリブルでボールを運ぶところからだ。

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鹿島のLSHの藤井が食いついて前に出てきた瞬間にサイドに張っているジョルディにパスをしている。

これによって、ジョルディにはスペースと時間が生まれた。

藤井はスピードがあるので追いついてはいるが、自陣ゴール方向にダッシュしているため、切り返されたらついていくのは難しい。

ジョルディのクロス、そして山田大記のゴールはゴラッソであったが、選手の特徴が発揮された過程も含めて素晴らしいゴールだったと思う。

 

数字に直結するようになってきた古川

個人的に全員がMVP級のパフォーマンスだったと思うが、決勝点となる2点目を決めた古川がヒーローとして扱われることに異論はないだろう。

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植村の忍者のように気配を消して裏のスペースに動く→そこに僅かな助走でロングスローを成功させる西久保→植村がファーストコントロールでクロスを蹴れるところにコントロールする→植村がゴール前にグラウンダーのクロス→渡邉がしっかり飛び込む(これで鹿島のそこに食いつかざるをえない)→ボールが流れてきたところで待っていた古川がシュート→ゴール⚽

名前が出てきた選手みんなナイスプレーだったけど、個人的に注目したいのは植村と渡邉。

スタートから出ていたこと考えると、植村が裏に走る選択をする判断とそれができる体力、そしてコントロールからクロスまでの無駄のないプレー。

渡邉もスタートから出ていて、かなり疲労のある役割をしていたのに、クロスに対して飛び込めていたのは評価したいところ。

ギリギリ触れるかの状況だったから、鹿島の選手もそこに食いついたわけだし。

 

個人的に気になった選手の選手評

三浦 龍輝

  • セットプレーのビッグセーブは素晴らしかった。
  • ビルドアップに関与したとき我慢できずに何本か縦に大きく蹴って、簡単に相手ボールを渡すのがもったいなかった。

 

ハッサン ヒル

  • エアバトルは強そう。
  • 後ろ向きで受ける選手に対しては、かなり強くアタックする。
  • 左足で蹴るのは得意でなさそう。

 

植村 洋斗

  • 個人的今節のMVP。
  • とにかく落ち着いていて、周りが見えている。
  • プレッシャーがあっても、簡単にボールを捨てようとしない。
  • SBで起点になれる。
  • 中盤としてもプレーできるため磐田の戦い方の幅を広げてくれている。
  • 終盤でも前に出ていけるゲーム体力。

 

渡邉 りょう

  • 前線からプレスのスイッチ役になれる走力がある。
  • エアバトルが結構強い。
  • 結構マイボールにしていた。
  • 終盤でもゴール前に飛び込める体力。
  • 下のカテゴリーから這い上がってきたのもあるのか、振る舞いに地に足がついている(試合後の円陣)。

youtu.be

  • このパフォーマンスが安定して出るなら、完全移籍で欲しい。

 

雑感

中断期間前に降格圏に落ちてしまい、中断明けに流れが変わることを期待されながらも、苦しい試合となった前節。

このままで本当に大丈夫なのか?という不安が大きくなる中で、強豪鹿島相手にこれ以上ない結果を出してくれたと思う。

降格圏からもギリギリ抜け出し、10位とは勝点差6、9位とは7差と、自分たちの頑張り次第で上を狙える位置にいる(勝点3の大きさを実感)。

Go on.の動画を見てもわかるように選手たちはこの1勝に浮かれていない。

次節は首位の町田。

ホームで勝った相手。

昨シーズンはアウェイで悔しい負け方をしているので、勝ってダブルを達成したいところ。

AbemeTVで無料配信されるようなので、非常に楽しみ。

 

<おわり>