磐田のストーブリーグの動向からいろいろ考えてみた

試合が行われていなくても、シーズンが終わっている感じはしない。

それはストーブリーグがあるからだろう。

毎日「今日は何か情報があるか?」と目覚めてからチェックするのがルーティーンになっていた人も少なくないのでは?

私も磐田の動向をチェックしながら、毎日楽しませてもらっていた。

ただ、「○○が入った!!」「○○が移籍してしまった…」「○○が満了になってしまた…」と一つ一つの案件を楽しむのも悪くないが、全体を見渡すことでクラブがどういう考えでストーブリーグを動いていて、2024シーズンに向けてどういうチーム作りをしているのかが見えてくると思う。

なので、個人的に感じたことを書いてみた。

 

 

磐田の2024シーズンストーブリーグ

OUT

引退
  • 八田 直樹(37)
  • 大津 祐樹(33)
  • 遠藤保仁(43)
契約満了
  • 針谷 岳晃(→福島)(25)
  • ファビアン・ゴンザレス(→甲府)(31)
  • 清田 奈央弥(→おこしやす京都)(22)
  • 三木 直土(→福島)(22)
  • 山本 康裕(→松本山雅)(34)
完全移籍
  • 中川 創(→藤枝)(24)
  • 鈴木 雄斗(→湘南)(30)
  • 梶川 裕嗣(→鹿島)(32)
  • 山本 義道(→金沢)(28)
  • ドゥドゥ(→千葉)(26)
  • 高野 遼(→相模原)(29)
期限付き移籍

 

IN

完全移籍

 

期限付き移籍
  • 坪井 湧也(←神戸)(24)

 

新卒

 

 

若返りを狙った選手の出し入れ

選手の価値は、若ければいいというものではないが、若い方が価値があることも多い。

あくまで一般的な傾向としてだが、若い選手の方が強度の高い動きを継続的に実行できる(ことが多い)。

磐田は、2023シーズンの新規選手登録禁止の煽りを受けて、2022シーズンにJ1では強度の基準を上げないとどうにもならないという状況を選手の入れ替えによって変えることができなかった。

その強度というのは選手の日頃の意識の部分やチームが求める強度の基準の低さの問題もあるが、単純にアスリート能力で太刀打ちできていないところもあった。

なので、今回の大幅な入れ替えは避けることができなかった。

OUTの平均年齢が約26.33歳なのに対して、INの平均年齢は約24.63歳と2歳近く平均年齢年齢は若く、現在のJ1に対応できるチームを作ろうという気持ちが伝わってくる。

 

 

ポジション別評価

GK

2023シーズンは、実質3人体制であったGKだが、今シーズンは4人体制に。

平均年齢も4歳ほど若返った(40歳の川島を獲得したのに)。

レギュラーであった三浦のみが残り、他の3人は新加入で大きく様変わりした。

特筆すべき注目ポイントは、やはり川島の獲得だろう。

磐田は歴史上、こういった経歴が立派な選手を獲得することはあったが、傍から見ると必ずしもそのときにその選手が必要なのか疑問に感じるようなことも少なくなかった。

しかし、今回の川島は獲得は非常に理にかなっていた。

以下個人的に感じた利点。

  • (ベテランが多く去ったチームにおいて)チームを引っ張れる存在。
  • 語学が堪能で、5人のブラジル人とも直接コミュニケーションがとれる。
  • J1で通用する能力を備えている可能性が非常に高い。

ピッチ上での活躍が期待できる上で、チームをマネジメントすることにおいて非常に助けとなる能力を備えている。

三浦と川島がある程度計算でき、かつそこに挑戦する若手が2人。

磐田はGKにおいては試合に出ていない選手も成長する傾向にあるので、非常にバランスのとれた編成だと思う。

 

DF

CB

シーズン途中で期限付き移籍した山本と中川がそのまま完全移籍になり、シーズン通して競争していた選手(負傷離脱の多かった森岡を除く)がそのまま残る形になったCB。

新加入と言えるのは、中盤もCBもできるらしい高卒新人の朴くらいで、補強と言えるものはなかったポジション。

朴がいきなり戦力に計算できるというサプライズを期待したいが、現実的に考えれば、4人体制とも言える。

負傷の多い森岡がいることを考えると、やや数が足りないような気もするが、みんなが健康に過ごせることを祈るしかない。

現状リカルド・グラッサが頭一つ抜ける存在で、もう一つのポジションを誰が奪うかという状況。

鈴木海音はJ1の出場経験がなく、森岡はJ1での経験が少ないことを考えるとやや不安もあるが、この選手たちが適応できることを期待したい。

補強をしてもよかったポジションでもあるとは思うが、昨シーズン大活躍したリカルド・グラッサを残せたことが最大の補強とも言え、年齢のバランスもよく、悪くない編成だと思う。

 

SB

昨シーズンの主力であった鈴木雄斗を引き抜かれてしまったのは大きな痛手ではあったが、面白い人材は獲得できたと思う。

ストーブリーグを追っていると、実力のあるSBの獲得は非常に難しいように見えた。

昇格クラブである磐田にJ1での実績と実力が備わったSBを獲得するというのはあまり現実的ではなく、そんな中で下のカテゴリーからJ1での実績はないが活躍できるポテンシャルのある選手を獲得できたことは評価できると思う。

とはいえ、松原は開幕に間に合うか微妙で、J1で今のところ計算できるのは小川のみと不安がないと言えば噓になる。

鈴木雄斗を残せていれば100点に近かった編成ではあるが、それでもやれることはやったと評価できる編成だと思う。

 

MF

DMF(4231の2)

長年チームを支えた山本康裕が契約満了、チーム内外で大きな影響力のある遠藤が引退。

30代の選手がいなくなり、一気に若返った。

J1クラブからのオファーのあった上原力也、終盤は相棒になった鹿沼、怪我で苦しんだが一定のインパクトを残した藤原を残すことに成功し、流出は起きなかった。

そこにゴメスとJ1で実績のある中村を獲得し、層は厚くなった。

ただ、J1のレベルで十分通用すると現段階で断言できるメンバーかというとそうではない。

蓋を開けてみないとわからない部分も多い(特に植村とゴメス)。

ただ、先に述べたように昨シーズンの主力を残しつつ、補強ができているので、評価していい編成だと思う。

 

OMF(4231の3)

(平川はDMF、石田はFWで起用される可能性もあり)

昨シーズンの主力であるドゥドゥを引き抜かれてしまったが、その穴を埋める、もしかしたらそれ以上の効果をもたらす可能性のある選手が獲得できたと思う。

ブルーノは、スピードとドリブルに特徴があり、サイドを個人で打開できたり、カウンター時の受け手として期待できそうで、古川しかいなかった単独で局面を変えてくれる可能性を秘めている。

平川は、ベテランの山田大記がい然としてレギュラー格であるトップ下のポジションを奪える可能性を十分に秘めている。

石田は、攻撃的なポジションであればどこでもやるようで、昨シーズン力強さという部分ではやや物足りなかった前線のポジションにおいて、Kリーグで鍛えられたフィジカルに本人曰く全部を平均以上やれるのが特徴らしいので、ユーティリティプレイヤーとしても期待した。

大森とドゥドゥが抜けて、以上の3人が加入したことから、このポジションは昨シーズンよりもスケールアップしていると思った。

 

FM

杉本の早々の移籍、ファビアン・ゴンザレスが罰則で数ヶ月の起用禁止、大津の大怪我など、とにかく選手が足りなくなったFW。

ジャーメインと後藤の頑張りにより、大きな穴になることはなかったが、昇格クラブなのに2桁ゴールした選手が一人もいないという珍しい状況になった。

ポジション関係なくゴールを奪えると言えば聞こえはいいが、スコアラーがいなかったとも言える。

後藤が移籍し、昨シーズンで残ったのはジャーメインのみ。

ブラジル人選手が未知数のため、層が厚いとは言い難い。

ただ、今回はOMF枠にした石田だが、FWもやれないことはなさそうなので、とりあえず人数は揃っている。

ウェベルトンは、かなりの素材枠臭がするので、過度な期待はできない(もちろん早くに活躍してほしいが)。

期待が掛かるのはマテウス・ペイショット。

190cm94kgという恵まれた体格からもわかるように高さと強さを兼ね備えたFW。

プレー動画を見た印象としては、比較的なんでもできるタイプ。

攻撃は頑張るけど、守備は頑張らないタイプだったらどうしようと思ったが、新体制発表で前線からのプレスもできると言っているので(横内監督が全員攻撃、全員守備をやるということに対し)、少なくともやらないタイプではなさそう(与えられたタスクをこなせるかは未知数)。

他のポジションと比較しても、新加入選手が違いをつくってくれないと一番困るポジション。

大きな違いを生み出せる”可能性のある”選手は獲れたとは思うが、蓋を開けてみないとわからないことが多く、現段階でこのポジションにおける編成を評価できるかといえば、どっちとも言えないというのが正直なところだ。

 

磐田のストーブリーグに感じたこと

J1カテゴリーからの選手補強が少ない

例えば磐田が今回のストーブリーグで明確な補強ポジションであったFWやSBを例に出すと、J1で活躍している選手を獲ることが一番失敗する可能性が低い。

FWであれば大迫、SBであれば酒井宏樹酒井高徳あたりを獲得できれば、チームがさらに強くなる可能性は極めて高いだろう。

しかし、この提案に同意してくれる磐田サポは多くないはずだ。

その理由は、資金的に現実的じゃないことと、クラブの格として相手にしてくれる可能性が低いということがある。

もし大迫を獲得するとなれば、年俸だけで数億円を提示しないといけないし、契約期間中であれば違約金も掛かる。

仮にこれのどちらもクリアできたとして、大迫が磐田に行きたいと思ってくれなければ獲得はできない。

客観的に近年の磐田の状況を見ると、J1とJ2を行ったり来たりするエレベータークラブだと思われても仕方ない成績を残している。

そんなチームにJ1で優勝したチームのエースが来たいと思うかというと、それはあまり現実的でないだろう。

大迫の例は極端ではあるが、他の選手にも同じように思われている可能性は十分あって「磐田に行って、いいキャリアを築けるのか?」と疑問に思われているかもしれない

そのため、J2やJ3といった下のカテゴリーの選手の方が磐田に移籍することを好意的に受け止めてくれる可能性が高いため、そういった選手にオファーを掛けることが多くなってしまう。

この問題を解決するためには、磐田がJ1に定着し、磐田に行けば少なくとも残留争いをするようなことはないだろうと思ってもらえるような結果を残していくしかない。

 

Jリーグで実績のないブラジル人選手を4人も補強した理由

上記したことに関連してくるのだが、J1で即戦力となるような選手を国内から連れてくるのが簡単ではない磐田。

となると、J1で違いを作れる選手を獲得するには国外から連れてくるしかなかったのだ。

esporte.ig.com.br

移籍金が発生したのはペイショットとブルーノのみで(合計で約1.5億)で、他2人はフリーで獲得。

おそらく前者は(磐田基準だと)そこそこな年俸だと思うが、後者はそれほど高くないと思う。

安いコストだとは思わないが、この投資額で活躍してくれれば、シーズンが終わったときには「安い投資だった」と感じれる額ではある。

 

移籍金を獲れた主力の移籍

鈴木雄斗とドゥドゥの移籍は、今ストーブリーグのトピックの一つだろう。

両選手とも引き抜かれたわけだが、よかったのは両選手とも契約が残っていたため、移籍金が発生したのだ。

ドゥドゥは磐田に3年契約で来ていて、鈴木雄斗は個人的な推測になってしまうが2023年の契約更新で新たに複数年を巻き直したことで、両選手ともに今ストーブで獲得するためには移籍金が発生する状況になっていた。

磐田は移籍市場において、インもアウトもあまりうまい印象がないのだが、今回のように契約が残っているけど出ていくとなれば、残念ではあるけど強化部はしっかり仕事しているなと思える。

ただ、今回たまたま契約が残っている選手が抜かれただけという可能性もあるので、今後の働きに注意しておきたい。

 

JSPとのお付き合いのスリム化

JSPとは「JAPAN SPORTS PROMOTION」という選手仲介人を請け負っている会社。

www.japansportspromotion.co.jp

"選手仲介人"はプロサッカー選手にとってどのような存在であるべきか。私たちは、夢や目標に向かっていく選手たちの「パートナー」でありたい、と考えております。これまでに多くの選手と共に歩んできた長年の経験と業界随一のネットワークを活用し、パートナーが最高のパフォーマンスを発揮できるような環境作りとそのために必要なあらゆるサポートを総合的に行っています。

私たちは選手仲介人の役割を契約交渉を肩代わりするだけの一過性のものとは考えておりません。パートナーが現役生活を終えた後も末永く続くような人間関係を築き、充実したセカンドキャリアを送ることのできるサッカー仲間を少しでも増やしたい。それが私たちの願いです。

磐田は良くも悪くも、ここのお得意様になっている。

(一応書いておくが、来てくれた選手個人に対してネガティブな感情があるとかではない。)

2023シーズンは、チーム始動時には10人ものJSP関連の選手がいた。

なぜ同じエージェントの選手が多いことを良くないと思っているかというと、クラブ主導で獲得したとうよりも「この移籍、磐田をいいように使われていない?」と思うことが少なくなかったからだ。

悪い意味でのお得意となっているように個人的には見えていた。

しかし、今回のストーブリーグで大幅にスリム化に成功している。

10人もいたのが6人まで減らせている。

ただし、鈴木雄斗、遠藤、大津に関しては、クラブ側が望んでいなくなったわけではないので、本当の意味でスリム化できたかというと怪しいところはある。

ただ、これを機に高年俸の選手の受け入れ先みたいになるようなことは減ってほしい。

 

雑感

個人的に今回のストーブリーグに悪い印象はない。

残留が固いメンバーを集めれたかと言えば、そうとは言い切れないが、それでもやれることはやってくれたなと思う。

1シーズンの実質の補強禁止と世代交代の時期が重なったことによって、ほぼ半数の選手が変わることになってしまったが、これは仕方ないことだろう(多くの選手との別れは寂しいが)。

前回昇格したときは「鈴木政一→伊藤彰」という繋がっているようで繋がっていない監督交代とJ1の強度に耐えれない選手を多く揃えてしまったという編成のミスによって、非常に厳しいシーズンとなってしまった。

しかし、今回は監督が変わらない、J2で強度の部分に向き合いながらシーズン過ごしてきた、編成面で磐田的に”うまい”と評価する選手よりも、大前提として強度やアスリート能力といった部分で適応できるかということが重視されている印象で、前回よりも期待がもてると感じている。

とはいえ、非常に厳しいシーズンにはなると思うので、変に高望みせずに、しかし期待はしながら楽しみたいと思う。

 

<おわり>