2022のFC東京について

早いもので、J1の開幕までちょうど2週間後です(ゼロックスはなんと来週の土曜日ですよ)。 個人的に今シーズン注目している東京は、2月18日(金)に王者川崎との試合が待ち受けおります。 変革期に位置付けられているシーズンに、絶対王者が開幕戦の相手というのは相当厳しいですが、楽しみな一戦であります。 さて、そんな東京ですが、親会社が変わった影響なのかどうかはわかりませんが、毎日のように公式で監督や選手のインタビューを発信してくれて、クラブがどういうことにチャレンジしようとしているかを理解するうえで助かっております。 そんなインタビューを読んでいると、今シーズンの東京は非常に苦しいシーズンを送ること予想されます。 監督が明言する苦労するシーズン Jリーグだと、多くのクラブである程度具体的な目標がシーズン前に発表されます。”全てのタイトル”、”(何かしらの)タイトル”、”一桁順位”、”残留”などクラブの事情によって目標は様々ですが、アルベル監督はそこに関しては明言していません。
アルベル監督 私にとって、そしてクラブにとって、ファン・サポーターの存在はとても重要です。だからこそ彼らに嘘をついてはいけません。このような試合結果を残せます、残しますという保証できないものを保証しては嘘になってしまうので、ファン・サポーターには誠意をもって本音で話をしなければいけないと思います。当然、毎試合勝利をめざして全力を出すことは保証します。けれども私たちがめざすプレースタイルというのは、シーズンのスタートのときにはいい結果を出すにことに苦労する可能性が当然あるというのは予想しています
(引用元:https://www.fctokyo.co.jp/fanzone/fctokyofanzone/detail/47) 東京は前監督の長谷川健太体制で、リーグ戦2位やルヴァンカップ優勝といった結果を残しています。リーグにおいて川崎が頭一つ抜けてきておりリーグ優勝の難易度は非常に難しくなりましたが、それでも今シーズンはタイトルを狙うと普段の東京であれば言っていると思います。 しかし、今シーズンに関しては新たなプレースタイルを浸透させることが最優先でることがアルベル監督のインタビューからは伝わってきます。 カウンターメインのスタイルから、ポゼッションやポジショニングを大事にするスタイルへ変化することは簡単でありません。まして、アルベル監督の思想とするフットボールは日本のフットボール土壌にはあまりないものです。 頭でわかっていても、感情はリンクしない 開幕前から「半年は苦労するかも」と監督が言ったり、選手も「完成させるには時間が掛かる」といった意味の発言が多々ありました。 サポーターの方には今から心の準備をしていて欲しいと言っているかのようにも聞こえます。 しかし、サポーターもある程度心の準備をしていたとして、実際に勝てない試合が続いたときにサポーターは「変革期だからしょうがないよね」と簡単に割り切れるものなのでしょうか? 残念ながら人間はそんなうまくできていません。応援しているクラブの勝敗というのは想像以上に気持ちに影響を与えます。その影響力は人によって違いがありますが、タイトルは取れなくてもしょうがない、今シーズンは内容が重要だと心の準備をしている人でも、実際に勝てないことが続くとストレスであったり、不信感が生まれるものです。 アルベル監督は、現時点でシーズンの頭に多く批判が降ってくるであろうことをすでに予想しています。これは結果が出なかったときの保険とかそういう意味でなく、実際にそうなる可能性が本当に高いのだと思っているからだと思われます。 変革期において内容と結果を同時に求めるのは可能なのか これは私の印象なのですが、東京は常にタイトルを求めているクラブだと思っています。よく言えば常に意識が高いとも言えますが、状況によっては足下が見えていないで定型文のように言っているだけだなと感じることもありました。 なので、これだけ苦労すると現場の人が言っていようとも、大きな結果を求める人は少なからずいます。 近年だと川崎、マリノス、徳島、浦和、清水といったクラブが形は違えど、大きな変化にチャレンジしてきました。 成功したクラブ、変革中のクラブ、うまくいかなかったクラブと様々ありますが、最初から順調だったというクラブはほぼありません。 しかし、それでも理想は結果と内容が同時進行で望むものを得ることです。それが実現可能かどうかでいえば、実現可能なことだと思います。 しかし、今シーズンの東京がそれを実現可能かどうかでいえば、かなり難しいというのが正直なところです。 なぜかというと、選手の入れ替わりがそれほどないからです。もし、クラブが1年目から結果も要求するとなれば、アルベル監督のやりたいフットボールにすぐに適応できる選手を多く連れてくる必要があります。 しかし、それをやろうとすると単純に多くの資金が必要になります。それと、選手を一気に入れ替えるというのは方々に軋轢が生まれる可能性があります。一気に変えてしまうのはクラブの評判を下げるリスクがあります。なので、必要最低限の補強をして、基本は昨シーズンからのメンバーで戦うという選択は、変革期における1年目としては間違っていないと思います。 アルベル監督は1年目はスタイルに適応できる選手を見極め、2年目に適応できた選手を残し、足りない部分(今いる選手では埋まることがないであろう部分)を補強するであろうことを予想できる発言をしております。 (下の発言は新潟についての話です)
そして、今までこのプレースタイルでプレーしてこなかった選手たちのプレーを実際にみて、どの選手がどのポジションに適しているかということをまず我々も観察しなければいけませんでした2シーズン目、私のプレースタイルに適応した選手が残り、適している選手を外から獲得して補強しました
(引用元:https://www.fctokyo.co.jp/fanzone/fctokyofanzone/detail/47) 今シーズンのメンバーがみんな適応できるということが理想ではありますが、その可能性は極めて低いでしょう。 なので、結果を求めるのは来シーズンからということになります。今シーズンは内容に注視して、結果に一喜一憂しすぎないようにしましょう。 … …. と簡単に言えればいいのですが、J1にはとある制度があります。 ”降格”です。 J1やJ2のクラブが新たなチャレンジをしたくても、簡単に決断できない理由として、この昇格降格の制度があることが大きな要因としてあると思っています。
山室:昇格降格制度の影響は大きいですね。特に降格は経営環境をガラッと変えてしまう死活問題です。残留争いの最終局面では、何よりも強化費を拡大して結果に繋げる必要があるので、非常に難しい企業経営を強いられます。 企業経営において、僕に求められているのは中長期的な役割。クラブを発展させるために、まず安定した収益をあげて投資に回し、確固たる収益基盤を作り上げることが必要です。 確固たる経営基盤を作るとは、ファンの数を増やすこと。常にリーグで1桁順位を維持し、最低でも3年に1度は優勝争いができるチームであれば安定した収益を確保できますが、今のエスパルスの成績ではそういうわけにもいきません。
(引用元:https://azrena.com/post/17719/) 清水の社長はこのように語っています。降格することが”死活問題”とまで言っています。大きな親会社がいればそこまでの問題にはならないかもしれませんが、現状J1でもメディア露出がとても大きいというわけではないので、J2に降格することでメディア露出が減ったりと、資金面だけでなく、多くの面でネガティブなことが起きるのは予想できます。 東京も苦労することがすでに予想されていますが、残留争いをするくらいに苦労することも十分予想されます。 もしそんな状況になれば、サポーターやスポンサーは現状に不満を感じるはずです。ここ数年少なくとも残留争いとは無縁ではあった位置にいたのに、変革期だからといって残留争いをしているチーム状況を受け入れるのは簡単ではありません。 まだサポーターやスポンサーだけならいいですが、フロントや選手といった内部の人からも不信感や不満が生まれる可能性も否定はできません。キャンプ中の選手インタビューを読む限りでは、今やろうとしているスタイルに非常にポジティブな印象を抱いているようですが、所詮はキャンプ中の感想であり、真剣勝負のシーズンが始まれば、うまくいかなくなったときに全員が常に団結して同じ方向に進むというのは簡単なことではありません。 (記事を書いている途中に東京ヴェルディ加藤弘堅が自身のnoteで以下のような発言をしていたので引用しました。)
チームとしては今年はかなり若返り、メンバーの入れ替わりも多い中、雰囲気もよくトレーニングできてます。 ただ勘違いしてはいけないのが、公式での勝敗がないため、そこまで一喜一憂する事なく過ごせるから、雰囲気が崩れずにできているという事。 要はほとんどのチームが「雰囲気良くできてます」言います
うまくいかない状況になったときに、フロントや選手がどのような対応をするのかはよく見ておくといいかと思います。アルベル監督は、ブレずにやるべきことをやるタイプっぽく、妥協して中途半端なところに落ち着くみたいなことをはなさそうなので、フロントや選手が監督を信じれなくなったら、普通に切られるのではと思っています。 最後に 今のところ絶対苦労するだろうという要因で満載なのですが、どんなことがこの1年目で起きているのかは非常に楽しみです。 生みの苦しみと言われたりもしますが、とんでもない金満クラブにでもならない限り、Jリーグのクラブがこの苦しみを経験せずに今ないスタイルを得るのは不可能に近いです。 たぶん今シーズンの東京を追うことで「東京はクラブもサポも頑張ったなー」と思うかもしれないし「やっぱ東京はそんな感じだったか」と思う可能性もあります。 個人的には来シーズンに繋がる状態でシーズンが終わることを願っております。 <おわり> 似たようなチャレンジをした2021シーズンの浦和と清水についての感想を書いております。 興味がある方はぜひお読みください。 シーズン総括(浦和レッズ編) シーズン総括(清水エスパルス編)