守り方を知らない日本人 日本サッカーを世界トップへ導く守備のセオリー

守り方を知らない日本人 日本サッカーを世界トップへ導く守備のセオリー
守り方を知らない日本人 日本サッカーを世界トップへ導く守備のセオリー 読了しました。簡単に感想を残しておきます。 感想
・日本代表 or Jリーグの試合を対象にディフェンス面のダメな部分をひたすら指摘されている ・褒めの要素はほとんどないに等しい ・対象試合が数年前のため動画でのチェックが難しい(途中でyoutubeのハイライト動画のURLが紹介される試合もあるけど、すでに観れない(スカパー時代のやつだから?)) ・図があるときもある ・視覚での確認が難しいため、文章からシチュエーションを想像できる能力が必要
ざっくりと箇条書きで書いたが「世界が指摘する岡田ジャパンの決定的戦術ミス」を読んだことがある人なら、そこにJリーグの試合が追加されたと思ってもらえるといいと思う。 世界が指摘する岡田ジャパンの決定的戦術ミス〜イタリア人監督5人が日本代表の7試合を徹底分析〜 (COSMO BOOKS)
世界が指摘する岡田ジャパンの決定的戦術ミス〜イタリア人監督5人が日本代表の7試合を徹底分析〜 (COSMO BOOKS) もし、こちらを読んでいないのなら、こっちを先に読んだ方がいいかもしれない。 正直「世界が指摘する…」を読んでいるのなら、この本を絶対に買うべきかというそうではないと思う。なぜなら、指摘されていることがほとんど変わっていないからだ。簡単に言うと「お前らゾーンディフェンス全然できていないやんけ!ポジショニングめちゃくちゃや!」って感じだからだ。 しかし、個人的にはJリーグの試合を対象に批評されると、もっと問題が身近に感じれて買って損はなかったなと思った。ゾーンディフェンスが普及している国(今回だとイタリア)のサッカー関係者からすると、まだまだ日本人選手の動きには不可解なものが多いようだ。とにかくスペースに対しての危機管理が足りない。相手選手の動きに簡単に釣られてしまい、空けてはいけないところにスペースを生み出してしまう。 では、「選手は何やってんだ!もっとスペースへの危機感をもて!」でいいのかといったら違う。全員とは言わないが、多くの選手がゾーンディフェンスよりもマンツーマンディフェンスを主に指導されながら育ってきたはずだ。それだと、今の現状は説明がつく。一人一人が目の前の選手を守ることが良しと思っているのだから、スペースを考える必要がない。なので、マンツーマンを軸に動いているチーム(なんちゃってゾーンディフェンスも含め)の選手に「ゾーンディフェンスの原則なら、その動きはありえへん!!」と指摘したところで、そのチーム(選手)が変わることはないだろう。 この本を読んでいて思ったのは、今回分析をしてくれたフランチェスコ・マクリ(イタリア人サッカー指導者)の指摘は正しい。しかし、上記に書いたようにゾーンディフェンスの考え方を選手がそもそも知らなかったり、理解できていないことが考えられる。知っているけどやらないのと、知らなくてやれないのとでは全然違う(一応書いておくが、マクリ氏は、日本の育成年代試合もチェックしていて、ディフェンスの問題が育成年代から起きていることを理解している)。ゾーンディフェンスというのは別に特別なディフェンス方法ではない。「欧州の真似事ばかりする必要はない。日本は日本のやり方でいく。」と突っぱねるようなことではない。突っぱねているという意識はないのかもしれないが「世界が指摘する…」の本が出たのが2010年。あれからすでに9年が経過している。今回の本は2017年に出たものだが、それでも7年が経過している。日本サッカー全体として取り入れていこうとしない何か理由があるのでは勘ぐってしまう。 実際にJリーグの試合の失点シーンをチェックしてみた 先に言っておきますが、失点シーンをとりあげて細かく分析をしたりとかはしてません。理由は簡単「面倒( ー`дー´)キリッ」。 本当はフルタイムでチェックするのが理想なのですが、そんな時間はないので、失点シーンの少なくとも30秒前からの流れでチェックしました。 対象試合 ・J1 第12節全試合 ・J2 千葉vs岐阜 (千葉と岐阜が入ったのは、5-1という結果が目に付いたから) 私の目からすると、どの失点もオフェンス側のクオリティの高さよりも、ディフェンス側のエラーによる失点が大半のように観えた。 一つだけシーンを引き合いに出すと、浦和vs湘南の杉岡の幻のゴールシーンだ(失点シーンではないけど、実質失点のようなものなので)。誤審の陰に隠れているが、杉岡のシュートまでに至る浦和のディフェンスはかなり酷いものだったように思う。最終ラインで中央のレーンにいるCBの岩波が果敢(無謀?)にボールを奪いにいくことで、ゴール中央の一番危険なスペースがガラ空きになってしまう。また、浦和の最終ラインの選手の距離が遠すぎるため、そのスペースを埋めることもできない。仮にマンツーマンを強く求められているにしても、宇賀神のマークの離し方は強く批判されるべきプレーなのではと思う(動画でチェックしたい方は下の動画で)。 (1:09~) たぶん、これもゾーンディフェンスの原則が身についていれば、問題なく対処できたとマクリ氏に言及されるシーンであったように思う。他の失点シーンも、そう感じるようなものが多かった。 この本を読むことでテレビやネットの記事なんかで「〇〇選手の素晴らしいゴール!」のようにオフェンス側のみが称賛されるようなゴールにも「もしかしたらディフェンス側に問題があるのでは?」という考えを持てるようになるのではないかと思う。日本サッカー全体としてディフェンスが向上しないと、オフェンスも向上しない。ディフェンスが向上することで、それを破るためのオフェンスが必要となる。逆もまた然り。その関係性が健全に作れないと、非常に歪んだものになってしまう(実際に今の日本サッカーは歪んだ方向に進んでいると思う)。 個人的な考えとしては、どんなスタイルもあってはいいと思っているが、日本サッカーはそんな独自な道を進めるほどの位置付けまで来たのかと疑問に思っている。日本代表ですら、欧州の中堅国に15分くらいでバラされて、痛いところを殴り続けられてしまうのが現実だ。 ハリルがマンツーマンの意識が強いディフェンスを導入していた。そのときにテレビ出るような多くの有識者が「なぜゾーンディフェンスを導入しないのか?」と言っていた。まるでハリルがゾーンディフェンスを仕込めないかのように。しかし、ハリルはゾーンディフェンスを仕込めないような監督ではない。では、なぜそんな監督がマンツーマンディフェンスを選択したのか?私はゾーンディフェンスとマンツーマンディフェンスから選択したというよりもマンツーマンディフェンスを選択せざるを得なかったのではと思っている。代表の短い期間でゾーンディフェンスをやるのは無理だとどこかで思ったのではと思う。 W杯での優勝を目標としているのだから、ディフェンスの問題は避けては通れない。しかし、現実としては「世界が指摘する…」から9年経過してもほぼ何も変わっていない。あまり悲観的にはなりたくないが、ここから10年経っても変わらないのでは思っている。それくらいディフェンスに関しては、改善しようという流れを感じない。 この記事を10年後読んだとき「お前の考え外れすぎ!!www」と言えるくらいの状況になっていることが望ましいが、そんな未来が待っているのだろうか… 終わり。