シーズン総括(浦和レッズ編)

今回は浦和編です。 浦和の試合も、8割以上は見たと思います。なので、個人的な総括(感想)を残しておこうかと思います。 0、はじめに 最初になぜ私が今シーズン浦和を追うことにしたのかを書いておきます。 浦和は3ヵ年計画を立てていまして、今シーズンはその2年目でした。しかし、昨年の大槻監督のシーズンは人によっては0年目と捉えられています。浦和は変わるためにいろいろと整理しないといけないことが多く、まずは土壌を綺麗にしなければならなく、それが昨年。そして、今年はそこに建物を建てる作業をスタートしたと私は思っています。 その組立の作業する一人のキーパーソンとして、徳島を長きにわたり指揮をし、最終的に昇格に導くという実績を残したロドリゲス監督を招聘しました。結果にシビアなサポが多い浦和において、ポジショナルプレーという、それまで浦和になかったものをどう根付かせ、同時に結果をどう残していくのか。その過程を見たいために浦和を追うことにしたのです。 1、選手の入れ替わり 昨シーズンの終了時点と今シーズンの終了時点の所属選手の比較が下の画像です。 (引用元:https://www.siraida.com/index.php) (左が2020、右が2021) index2.png 目に付くのは新加入選手の多さです。2020年は僅か3人(しかも1人は高卒)なのに対し、2021年は夏の加入も含めると15人(昇格1人)。 清水編でも似たようなことを書きましたが、新たなプレーモデルのために選手の大幅入れ替えを避けるのは難しいです。 ただ、トップチームの半数ほどが新加入選手で埋まるというのは、プレーモデル変更のためには犠牲なくしてはできないのだなという現実を突き付けられるなと感じました。 2、ポジショナルプレーに必要な人材とは 多くの選手が加入し、出ていくことになった今シーズンの浦和ですが、十分な人材が揃っていたかといえばそうではないと思います。 ロドリゲス監督が目指すスタイルとしては、丁寧にポゼッションでビルドアップしながらボールをクリーンに前線に届けてゴールを目指すことだと思います。 そのためにボールを動かしながら、相手を動かし、味方のために時間とスペースを生み出すことが大事になってきます。しかし、その時間やスペースというのは生み出したとしても長いこと存在するものではありません。生まれたタイミングを素早く認知し、そこに届けるスキルが必要になってきます。 後方のポジションでいうと西川と岩波は、どちらもキックの技術に定評のある選手です。しかし、どちらもチームにハマっていたかというとそうではなかったように思います。どちらもボールを精確に蹴るという点だけで言えば高いスキルがあると思います。しかし、ボールの球種は多くなく、それによってボールが前進できるタイミングでできなかったりという場面が何度とありました。 具体的に言えば、ミドルレンジを山なりの弾道でなく相手がギリギリ触れないくらいの弾道で蹴るスキルであったりです。 精確に蹴るというスキルだけでいえば西川はJリーグでNo.1と言っても過言ではないGKだと思いますが、ビルドアップのうまさにおいてはロティーナが監督をしていたセレッソのときのキムジンヒョンの方がレベル高いと思いました。そう感じたのは、たぶん蹴れるボールの球種にあったのではと思っています。 CBでいうとボールを蹴るスキル以外にもポジションにおける利き足の重要性とドリブルでボールを運ぶことの重要性も感じました。 基本的に2枚のセンターバックで戦っていた今シーズンの浦和ですが、LCBは右利きの選手が務めました。前半戦であれば槙野であり、後半戦はショルツでした。左よりのポジションの選手が右利きだと、右足で蹴りたいのでどうしても体が内側に向いてしまい、蹴れる方向が限定されてしまいます。プロの選手なので左足でボールを蹴ることはできますが、精度が高く、かつスピードのあるボールを蹴ろうと思うと利き足で蹴りたいと思うのは普通のことです。まして、今の浦和のCBの場合、ラフなロングボールでなく、味方にしっかりと届けるパスをしないといけないので、それをミスした場合ピンチになりやすくもあります。それでもチャレンジしてうまくなる選手を見たこともありますが、やはり純粋な利き足の選手と比べると劣ります。ショルツがRCBはやることもありましたが、やはり左よりもやりやすそうでしたし、CLレベルで戦っていた選手を窮屈なポジションでやらせているのは非常にもったいないなと思いました。 ドリブルでボールを運ぶことの重要性ですが、これも相手を動かすための重要なスキルになります。スペースがあるときにドリブルで運ぶことで注意を引き、他の選手のために時間とスペースをつくります。ショルツを除くと他のCBはこのプレーがあまりできなく、パスでなんとかしようというプレーが多いように見えました。特に岩波は、キックに自信があるせいもあるのかファーストコントロールで足下に止めることが多く、ボール保持においてパス以外のプレーで効果的なものが多かったかというと残念ながらそうでなかったように思います。 (左よりのポジションに左利きかつボールを運べる選手がいることの重要性を感じたいのであれば、ビジャレアルのパウトーレスを見ることをお勧めします。) ただ、後方の問題を解決したとしても、今の浦和にはまだ足りない人材がいます。サイドアタッカーです。 クリーンにボールを届けられるようになると1対1の局面が生まれてきます。そこを剥がせれば一気にチャンスになるというところで、剝がせなかったり、コンビネーションでないと打開できないとなると攻撃が停滞してきます。サイドアタッカーの質で優位に立てないことで苦しむのはフベロ磐田、ロティーナ清水、ポヤトス徳島といった複数のチームで見てきたので、このポジションの重要性はひしひしと感じています。 3、狭いエリアでのコンビネーションによる攻撃は本意なのか不本意なのか これは先ほど書いたビルドアップの問題やサイドアタッカーで質的優位に立てないというのも関係していることだと思うのですが、浦和は狭いエリアをコンビネーションで崩そうとしていることが増えていったように思います。 徳島は同じようにボールポゼッションを大事にするスタイルでしたが、選手との距離は狭くせずにスペースを潰し合わないように意識してプレーしていました。そのことが逆にサイドで質的優位を保てないことを浮き彫りにしてしまった言えなくもないわけですが、それでもクリーンにボールを運んでどうやってゴールを奪おうかという部分はクリアだったと思います。 浦和は、徳島ほどビルドアップの質は高くなく、アタッキングサードのサイドでボールを受けてもそれほど積極的に仕掛けるわけでもありませんでした。そのせいなのかはわかりませんが、狭いエリアでのコンビネーションプレーによる攻撃が増えていったように思います。日本のフットボールは意識してやらせない限りはピッチを広く使うことよりも、狭いエリアをコンビネーションやトリッキーなプレーで打開することが好む傾向にあります。 なので、ロドリゲス監督は今シーズンに関してはやりたいことよりも、結果を優先した戦い方(選手の慣れたプレー)を選択した可能性があるのではと思いました。人材が足りていないとはいえ、それなりの補強はしましたし、浦和のクラブ文化的にそれなりの結果を残せないと仕事をしにくい状況になる可能性があります。徳島を昇格させた実績があるとはいえ、J1での実績は皆無であることを考えると、自分の力を結果で証明する必要があったのではないかと思います。 この仮説が合っているかどうかは、ストーブリーグの補強と来シーズンのピッチ上で答え合わせできるかと思います。 4、勝負の2年目 勝ち点63で6位、ルヴァンカップベスト4、天皇杯ベスト4(12/7現在)という成績は1年目の成績としては悪くなかったと思う。今シーズンに関しては結果以外の部分でも取り組まないといけないことが多く、それを考慮すれば上々と言ってもいいのではと思いました。 しかし、来シーズンはこれらの成績を上回ることを期待されるでしょう。リーグ戦ではACL圏内を求められるでしょうし、カップ戦はタイトルを期待されると思います。 ただ、そのハードルは決して低いものではないと思います。高いレベルで安定して結果を残している川崎とマリノスを上回ることは容易なことではないですし、スター選手を集めて強化を図る神戸を超えるのも非常に難しいです。 ロドリゲス監督が求めることに対する戦術的理解の向上も大事だと思いますが、先にも書いたように(J1レベルで通用する)必要な人材を揃えられるかが大事だと思います。今シーズンすでにある程度の資金を投入しており、コロナで財布が厳しいことも重々承知ですが、もし来シーズンに今シーズンよりも求める結果が上がるのであればそこの補強は避けられないと思います。 5、雑感 個人的にシーズン前にこんな感じになるのではと想定していたことと比較すると、結果は思ったよりもよかったけど、ピッチ上の中身は思ったほどうまくいかなかったなと思いました。 昨シーズンまで率いていた徳島に比べると選手の質は上がるので、自分の中での期待値が高くなっていたのもあるかもしれません。 ただ、私が思ってい選手の質という部分も、見誤っていた部分があったので、そこの学びを得たのはありがたかったです。 これをリリースした12/7の時点では、琉球の知念と大宮の馬渡の獲得に動いているくらいの情報しか出ていないので、ここから情報がたくさん出てくるのかなと期待しています。 浦和が必要な人材はなかなか国内ではいなかったりなので、国外から探してくるんじゃないかなとも思っています(特にサイドアタッカー)。でも、コロナの入国制限があるので国内で妥協する可能性も十分ありますね。 浦和が欧州化して、結果と内容で高いレベルのものを表現してくれるとJリーグに与える影響も大きいと思うので、来シーズン更なる成長した姿が見れることを期待したいです。 <おわり>