欧州派遣Jコーチに聞く「日本人選手が10代後半で伸びなくなる理由」

欧州派遣Jコーチに聞く「日本人選手が10代後半で伸びなくなる理由」

抜粋元:https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/football/jleague_other/2017/07/08/post_34/

――話は変わりますが、U-15、16くらいの若年層までは、日本は強い印象がありますが、大人になるにつれて世界に通用しなくなるような気がします。どう思われますか?

「僕もそこを知りたいです。ひとつにはフィジカルの要素があると思います。U-17からU-20くらいになると、強さ、速さ、高さに差が出てきますよね。ふたつ目の要素として、U-18からU-20前後で試合の経験値の差が出る。ヨーロッパのほうが場数が多いし、緊張度の高い試合が確保されている。この2点は日本にいるときからなんとなくそうだなと感じていて、こちらに来て実際に確認できたことです。

 もうひとつ。先日オランダのアヤックスに行き、白井さん(裕之氏。アヤックスのユース年代専属アナリスト)と会ってお話をしたんです。その時に、三つ目の要素のことをおっしゃっていました。日本の選手のよさとして、瞬間、瞬間で即興のプレーができる。お互いわかりあえるし、隣の人のことを気にかける習慣ができているから、隣の人の動きを気にしながらやるということはすぐできる。サッカーにおいてもその特徴が出て、アヤックスの指導者がJリーグ選抜とアヤックスの試合を見た時に、『いつも思うけど、どうして日本人は即興の連続でプレーできるんだ?』と言うらしいのです。

どういうことかというと、『オランダのサッカーはある程度「型」がある。その中でプレーしているから、15歳、16歳でそれと全く違うことを日本人にやられると、対応しきれない』ということなんです。速くてつかまえられないと感じる。だから年齢が若いと対応できないのだけれど、18歳くらいを過ぎると、トップに残っているのはインテリジェンスもある選手だから、だんだん対応できてくるらしいのです。そうなってくると日本は打つ手がない。即興性を消されたら、何で勝負するか。体もスピードも、決定的な強みがない。これはひとつの考え方だと思いました」

――どうしたらいいのでしょう。

「即興性のいいところは相手が読めないことです。デメリットは同じことをもう一度やることができないことです。だから、はまるときははまる。はまらなかったらはまらない。自然発生的にゴールが生まれたら、似たようなやり方はできるけど、同じことはできないし、対応されたら何をしたらいいかわからないですよね。

 僕も指導中に、相手を見なさい、味方を見なさい、スペース、流れを見なさい、と言います。日本の教え方は、気にすることが多いんですね。ベルギーでも気にすることは同じようにありますが、少なくとも味方のことは気にしなくていいくらい、システマティックに、こうすればここにいるはずだというのが各チームであるんです。『日本も即興性だけに頼らないようになったら、あっという間に強くなるのではないか』という話を白井さんもされていました。そういう話を、若くして欧州サッカーに直接飛び込んだ方からお話を聞くことができているのも、とてもいい経験だと感じています」

<抜粋おわり>