【京都 vs 長崎】「勝つことが正義。だけど・・・」金久保順が語る今季の現状と、昨季との違い

【京都 vs 長崎】「勝つことが正義。だけど・・・」金久保順が語る今季の現状と、昨季との違い

(J's GOALが閉鎖されるようなので、全文引用させてもらいます)

明治安田生命J2リーグ第37節・松本戦はスコアレスドローに終わった。敵地での勝点1は最低限の結果かもしれないが、試合内容は今季のチームが抱える様々な問題が見えてくるものだった。

11試合ぶり、約1ヵ月半ぶりのスタメン出場となった金久保順は「もう少しボールを握りたかったけど、守備の時間が長くて、自分の特徴も出しづらいゲームになってしまった」と振り返る。

その原因について「一人ひとりのポジションが遠かったり、DFラインが低くなってしまったのもある。今までは前線にウタカがいて、そこを中心に縦に早いサッカーが最近は主流になっていた。奪ってカウンターというサッカー。そこから(松本戦は)自分たちがボールを握るとなったとき、積み上がっているものが無かった。選手同士で連動できず、ボールを握ることも相手の方が上手かった」と説明している。

この試合には、J2得点ランキング首位を独走するピーター ウタカを帯同させなかった。4日前の試合で消耗の激しい試合をしたこと、連戦で移動も伴うことなどが考慮されたと考えられるが、エース不在の影響は様々な意味で大きかった。

「誰が見てもウタカのチームだし、ウタカがいないと普通のチーム以下の実力しかないのが現状だと思う。それらを把握して、謙虚に受け止めて、自分たちは相手より走ったり球際を戦ったりして上回るしかない」

今節はコンディションを整えたエースの復帰が濃厚だ。それに伴い、戦い方も前節から変化するだろう。

「上位チームにいい戦いができるのは『相手がボールを握って、僕たちがショートカウンターからウタカが点を取る』というパターンがはまっているからだと感じています。本当は自分たちで主導権を握って勝ちたいのが本音だけど、今はそれが勝利に一番近いのかな」と複雑な心境ものぞかせる。

自分たちが主導権を握って試合を進めることは、今季の京都が開幕前から目指していたものだし、更にさかのぼれば昨季のチームが体現していたスタイルでもある。昨季と今季の両方を経験している金久保に、その違いや思うことを尋ねてみると「勝つことが正義というか、勝点を取ることが正解なので。自分の感情どうこうでは、あまり言えないんだけど…」と前置きした上で、思いを言葉にしてくれた。

「去年は僕だけじゃなくて、多くの選手に充実感があったと思う。勝っても負けても、自分たち主導でサンガの形を出して、その上で勝ちや負けの結果があった。スタイルはハッキリしたものがあった。僕自身には合っていたし、楽しかった。今年はメンバーが変わって、強烈なストライカーがいて、それを支える選手たちがいるチームになった。それも正解だし、それで勝てるのもサッカーです。どっちがどう、というのは無いけれど、結果として去年も今年もJ1昇格に届かなかった。正直な気持ちを言えば、1年ごとにサッカーを変えてるのではなく、継続すること。例えば(現在首位の)徳島には積み上げてきた自分たちのサッカーがあって、こういう苦しい日程でその差が出るんだと思う」。

前々節でJ1昇格の可能性が数字上でも消滅した。また、今季はコロナ禍でリーグは12月中旬まで続くが、本来なら来季へ向けた動きが活発になる時期でもある。シーズン終盤に差し掛かると、様々な要因がチームや選手にのしかかってくる。優れた技術や体力や頭脳などを持つ彼らだが、人間である以上、それらに影響されるなというのが簡単なことではないのも現実だ。

そうしたことを踏まえたうえで、「大きな目標はなくなってしまったけれど、スタジアムへ来てくれる人や応援してくれる人の為にも(精神面が)変わっちゃいけない。自分のできる100%を出していくこと。消化試合にならないように、全員の気持ちを勝利に向かって戦いたい」(金久保)と声を上げる選手たちの思いに心を寄せ、彼らが見せるピッチ上での戦いに注目したい。

文:雨堤俊祐(京都担当)