基本を学ばずに応用をしたくなるのはみんな同じ

(この記事は2019/08/07にnoteで書いた記事です) 1ヶ月近く晴れ間の出ない日が続いたかと思いきや「人間どもを駆逐してやる」言わんばかりの晴れ間と暑さ。熱中症はマジでヤバいので、暑さ対策はやりすぎくらいやることをおすすめします。 私が応援している磐田が最下位になりました(8/5現在)。まぁ、想定内のことなので、順位に関しては別に驚きはありません(新戦力は期待できそうでした)。 今回言いたいのは「3バックでハイラインを維持しつつ、両CBが積極的に攻め上がる」ことや「偽SB(のようなもの)」といったある種”応用レベル”の戦術を導入することに対してです。 応用はカッコイイ 微力ながらも、子供にサッカーを教えているのですが、子供というのはカッコイイことをやりたいです。それは何も悪いことではありません。大人だってカッコイイことには憧れるし、やれることならやりたいものです。 ちょっと見本を観たり、ちょっと丁寧に説明すれば実行できてしまう選手はいます。しかし、当然できない選手もいます。できない要因はいろいろあります。その中の1つに「とにかくカッコよく応用をやりたい」というものがあります。 どんな分野でも”基本”と呼ばれるものはありますが、応用に比べるとわかりやすいカッコよさはありません。大人だとその辺の区別をできてきますが、子供だとなかなか難しいです。「応用やりたないなら、まずは基本から~」と言っても、なかなか聞いてくれない子もいます(^^;) 「おいおい、磐田の選手は立派な大人の集まりだぞ?子供といっしょにしてんじゃね~ぞ!!」 そんな声が聞こえてきそうですが、何が言いたいかというと基本なくして応用はないという当たり前のことなのです。 インターネットによって情報が手に入るようになった現代 「5レーン」「ポジショナルプレー」「ハーフスペース」… そんな様々な言葉が日本のサッカーにも浸透しつつあります。これは明らかにインターネットによる影響が大きいです。 前述した「3バックでハイラインを維持しつつ、両CBが積極的に攻め上がる」や「偽SB(のようなもの)」もそんな影響があるかと思われます。 こういった戦術を使用しているのは、私の知る限りでは世界的なビッグクラブであったり、欧州4大リーグと呼ばれるようなトップリーグに所属しているクラブだと思います。 彼らと磐田が大きく違うのが”基礎”の部分です。私は磐田が名波体制になってからはそれなりにしっかり試合を観ているつもりですが、このチームにはゾーンディフェンスという概念はないよう思えます。ゾーンディフェンスというのは人がどこに立っているかというのが非常に大事な戦術です。僅かなズレがピンチを招きます。では、ゾーンディフェンスというのは特別な戦術かというとそうではありません。欧州だとアマチュアでも当然やっているという基礎レベルのことです。 例えば「3バックでハイラインを維持しつつ、両CBが積極的に攻め上がる」というのはメリットを考えれば「ゴール前に多くの人数を掛けれる」「後方にいるはずの選手が攻め上がってくるため、相手選手が対応に困る」といったものがあります。 しかし、どんな戦術もそうですが、デメリットも存在します。ハイラインにすると、最終ラインの裏には大きなスペースが生まれます。裏のスペースというのは突かれると一気にピンチになるスペースでもあります。「そんな危険なスペースを生んでいいの?」と思う人もいるでしょ。まぁ、よくはないです。でも、メリットとデメリットを比較して、どちらかを選択しなければいけません。さらに言えば、バカみたいに裏のスペースを突かれてはいけません。あくまで”空いている”だけであり、そこを利用されていいわけではありません。 解決方法はいろいろありますが、1つはCBに個人能力に秀でた選手を置いておくことです。現在マリノスにそれをわかりやすく具現化しているチアゴ・マルチンスという選手がいます。チアゴは、足が非常に速く、対人能力に秀でています。マリノスもハイラインの戦術を採用していますが、裏のスペースを突かれることも少なくありません。しかし、チアゴがいることでピンチを防いでくれます。 もう1つの解決方法としては、そもそも裏に蹴らせないというものです。たぶん、ハイラインを採用するチームは基本的にまずはこっちを考えているはずです(マリノスも利用されてOKとは思っていないはず)。プロの選手は技術に差はあれど、ドフリーでボールを蹴らせれば、めちゃくちゃ下手という選手は存在しません。選手によって精度に差はあれど、ある程度精確に蹴ってきます。ハイラインの場合だと、最終ラインの後ろに”広大な”スペースがあるために正確無比なパスが必要かというとそうでもないです(精確なら精確なほどいいけどね)。 となると、ドフリーで裏へのパスを許すなどという状況を生み出してはいけないわけです。そのためにボールホルダーへの厳しいプレッシャーもそうですが、ボールに直接関与をしていない選手がどこにいるかが非常に大事になてきます。だって、ボールホルダーの10m横にいる選手がドフリーでパスできるような状況だったら、パス出されて受けた選手がドフリーでパスできてしまうからです。 こういうときに大事になってくるのがゾーンディフェンスです。ポジショニングを細かく求められるこの戦術が身についていないと、気合いと根性で守るしかなくなります。しかし、フットボールの性質的に気合いと根性だけで勝つことは非常に難しいです(勝てるときもありますが)。 しかし、それを実践しているチームがあります。そうです、ジュビロ磐田です。ゾーンディフェンスというある種”基礎”と呼ばれるであろう戦術をすっ飛ばして、応用戦術をやっています。その結果、現在最下位なのです。 応用はカッコイイけど… SBを内側に立たせたり、CBを攻め上がらせたりというのは一般的かというとそうではないです。そのため、奇抜で、効果があれば「すげぇ!カッコイイ!」となります。しかし、それを成功させるための下地も作っていないのに実行してしまうと、側を真似ただけのモノマネになってしまうというのを私は何度も観ました。 私もペップ、サッリ、クロップといった現在フットボールの最前線で攻撃的で強いチームを作る監督が好きです。しかし、彼らは独自の理論のようなものだけで指導者キャリアを形成してきたのでしょうか?攻撃的だからと、守備はノータッチでもいいとか考えているのでしょうか? 絶対にそんなことはないです。 他のチームとは違う特別な”何か”をする前に普遍的で、しかしとても大事なことをまずは落とし込まないといけない。そんなことは常日頃思っているわけです。