【ジュビロ磐田】2025 総括

まずは今シーズンも楽しませてくれたことに感謝です。

今シーズンの磐田を見ることで、フットボールに対する知見も増えたと思います。

良いことも悪いこともあったシーズンでしたが、今シーズンを振り返っておこうと思います。

ジュビロ磐田の2025シーズンの結果

・リーグ戦 5位

・J1昇格PO準決勝敗退

ルヴァンカップ プレーオフラウンド(4回戦)敗退

天皇杯 2回戦敗退

 

ジョン・ハッチンソン

戦績

・リーグ戦 14勝6分11敗(得点48 失点42)

ルヴァンカップ プレーオフラウンド(4回戦)敗退(得点7 失点5)

天皇杯 2回戦敗退(得点1 失点2)

gorillasoccer.hatenablog.com

上記の記事で触れていることと重複することもあるかもしれませんが、ここを触れないわけにはいきません。

前任者である横内監督では、J1だとボールも握れないし、かといって引いて守っても守り切れないという、何をしても通用しないという状況に陥りました。

その経験から、せめて4割以上は安定してポゼッションできないとキツイなと個人的に感じました。

そういった意味では、ボールのポゼッション率を高め、自分たちで能動的にゲームをコントロールしようとするジョンの就任は的を得ていたとも言えます。

しかし、前チームであるマリノスと大きく違うのは、前任者たちがポステゴクルーでもないし、マスコットでもないということです。

ジョンが与えられたミッションは、

・ほぼ0ベースからジョンの理想とするチームを作る。

・J1昇格

これは非常にハードルの高いものでした。

「新しい歴史を作る」というのがキャッチフレーズでしたが、もし実現できたら新しい歴史を作っていると言ってもいいと思いました。

 

ポゼッション

ポゼッションに関しては、昨シーズンまでポゼッションというワードと遠い存在であったチームにその概念を生み出したのは素晴らしかったです。

開幕から、ポゼッションしながらWGにボールを届けて、ゴールに迫る姿は、これまでの磐田の歴史からも異質に感じました。

ポゼッションを戦い方のベースにすることで、個人戦術の成長を見ることができて、その点も非常に楽しいと思える要素の一つでした。

ハイプレス・ハイライン

ジョンが結果が出なかった理由は、圧倒的な失点数です。

磐田は最終的に得失点差8なのですが、これはPOより上の順位のチームでは圧倒的に最下位です(次は長崎の19)。

失点の大部分は、ジョンのときに重ねたものです。

ジョンの志向するフットボールは常に自分たちからアクションを起こすということに強く重きを置いているように感じました。

シーズンが進むにつれて、積極的にボールを奪いにいくことで、空いたスペースを効果的に使われて、あっさりと失点してしまうということが増えていきました。

ジョンにとって、引いてブロックを作るとか、状況によっては人海戦術のように守り、とにかく失点しないという戦い方をするというのは、選択肢としてほとんどなかったように思います。

それはできないというよりも、それをやるのであれば、監督が自分である必要はないといった強いこだわりのように感じました。

ジョンの考えるハイライン・ハイプレスについては、酒井高徳がポステゴクルーのハイライン・ハイプレスについて語っている考え方とほぼ同じだと思います。

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ジョンからすると、そもそも空いたスペースに蹴られていることが問題で、その前にしっかりと(ジョンが理想とする)プレスをしていれば、空いたスペースに蹴られるということ自体が起きていないという考えなのかもしれません。

しかし、理論上ではそうでもこれを実行するのは非常に難しいです。

磐田で起きていたことだと、ファーストプレスがハイプレスをするには無理な位置からスタートし、ただただ相手の攻撃のスイッチを入れてしまったりしていました。

また、磐田の選手の特徴(主に走力)ではそれを実行するのは難しいのでは?と思うことも少なくありませんでした。

仮にプレスの精度を高めたとしても、ハイラインを1度も破られないということはほぼありません。

ポステゴクルーが率いたチームでもハイラインは破られていました。

今だとバルセロナも破られています。

ハイラインを破られると、1回で1失点してもおかしくないようなチャンスの質になってしまいます。

それを防ぐために守るエリアが異常に広いマリノスだとチアゴ・マルティンスがいました。

しかし、磐田にはいませんでした。

リカルド・グラッサも広い方ではありますが、相手アタッカーがスピードに特徴のあるタイプだと厳しかったです。

江﨑やヤン・ファンデンベルフも当然ながら、そこに特徴があるタイプではありません。

ジョンがここまでこだわりが強く、頑固であることをクラブが理解していたのであれば、快速CBを用意できなかった時点で、後々苦しむことは決まっていたのかもしれません…

 

安間 貴義

戦績

・リーグ戦 5勝1分1敗(得点11 失点9)

・J1昇格PO準決勝敗退

POすら厳しい状況から、最終的に5位に滑り込み、J1昇格POまで導いてくれました。

残念ながらJ1昇格とはなりませんでしたが、7試合で勝点16を獲得し、POに進んだのは素直に称賛されるべきことだと思います。

結果だけを見れば「来シーズンもよろしくお願いします!」と言いたくなるとこですが、試合内容を見ると、個人的にそうは思えないです。

最初はハイプレス・ハイラインを自重させて、バランスを重視するように見えましたが、徳島戦の大敗により、システムを3バック(5バック)に変えて、物理的に人を増やして、失点を減らす方向に舵を切りました。

磐田の選手の質はJ2では高い部類のため、これで失点数は減らすことができました。

しかし、中身を見ると対戦相手に限らずしっかり崩されましたし、ジョンのときに特徴であったポゼッションしながら、能動的に相手陣地に押し込むということもほとんどなくなりました。

ポゼッションのフェーズに移ったときに、即興が増えて、簡単なパスミス(のように見える)ことが増えました。

チームで動きが噛み合うということが増えて、個人の頑張りで状況を打開しないといけないことが増えました。

リスクを負わずに大きく蹴りだし、とにかく失点をせずに後半中盤くらいまで耐えて、相手が疲れてきたらベンチにいる攻撃に特徴のある選手を交代で出して押し切る。

それによって、確かに結果は出ましたが、安定して結果を出せるスタイルかといったら違うと思います。

私は”安間監督が実はもっと戦術的に幅のある監督で、時間を与えれば違うスタイルが見れる”とは思っていません。

例えば本当にもっとポゼッションにこだわりたいというのがあったら、システムを変えても、仕組みとして何かしらを仕込んで、それをピッチで体現させていると思います。

フベロ監督は、名波監督のチームにシーズン中に守備を整理しつつも、ポゼッションの仕組みも仕込みました。

当時と状況が同じではないため、単純な比較はできませんが、安間監督も中断期間がありましたし、時間が全くなかったとは思いません。

安間監督は、トレーニング強度について強調することが多かったですが、結局そこの突き詰めばかりで、その先に何かあるの?と言ったら、私はないように感じています。

そこを突き詰めた先の結末は、名波監督に見たと思っています。

 

浜浦社長と藤田SD

XにPOの徳島戦後に浜浦社長と藤田SDがゴール裏と話し合いをしている写真がアップされていました。

試合後にゴール裏と話す是非は一旦置いておきますが、今の磐田の状況でサポーターがいろいろ言いたくなる理由は理解できます。

ただ、私は浜浦社長が立場上行かないといけないのは理解しつつも、なんかモヤモヤする気持ちがあったのです。

 

チーム強化の責任

クラブのトップである社長なので、当然結果が出ないときの責任は問われます。

ただ、チームの強さを浜浦社長に求めることは、正しいことなのかという気持ちもあります。

浜浦社長はヤマハ発動機ラグビー部出身の方で、フットボールの世界で生きてきた人ではありません。

そういった人材にフットボールの専門性が問われる仕事は、そもそも期待するべき部分ではありません。

求める部分とすれば、経営の部分であったり、ピッチ上とは離れた部分(地域との繋がりなど)なんじゃないかと個人的に思っています。

当然強化のためにお金をどうするかという部分で関わりは出てきますが、専門的に選手を評価できるわけではないはずなので、チームが強くなるかどうかの責任は強化部の方が大きいと思うのです。

私は藤田SDの責任が非常に重いと思っています。

まず、私はゴール裏のサポーターが話し合いをしたいのは理解できると書きましたが、その理由はクラブからこういう方向性で進んでいきたいといった発信が極めて少なくないのです。

磐田は以前2026(26-27)シーズンJ1優勝という中期的な目標を立てました。

しかし、その目標とはあまりに乖離するチーム状況でした。

その目標が迫る2024シーズンにJ2降格となり、目標の前年をJ2で戦うことになりました。

それでも、この目標を下方修正することはありませんでした。

つまり、今シーズン昇格して、来シーズンはJ1で優勝するということです。

過去に昇格初年度に優勝するクラブはありましたが、そういったクラブはJ2のときからJ1で戦える戦力が揃っていたり、資金力がJ1でも上位にくるようなクラブでした。

優勝はしませんでしたが、昨シーズンの町田はA代表クラスの選手を補強しました。

しかし、それでも優勝には届きませんでした。

現在はそういうリーグレベルになっているのです。

磐田の今シーズンの編成がJ1レベルかといったら微妙なところです。

J1級の選手はいますが、そういう集団ではなかったと思います。

では、仮に昇格ができていたとして、J1で優勝を狙えるような資金力があるかといったらそれもありません。

そういった状況でも目標は変わらず、どうやってそこに辿り着くかの情報共有もありません。

シーズン終盤にゴール裏のサポーターが「責任をとるのはいつも現場ばかり」といった内容の弾幕を出していました。

私の受け止め方だと、クラブが何をしたいのかよくわからないのだと思います。

大きな目標を立てて、見栄えはいいけど、そこにどう進もうとしているのかわからない。

行動だけでそれを読み取ることもできない。

それで結果が出なければ監督が去って終わり。

いやいや、ちょっと待ってよと言いたくなります。

藤田SDになってからの現場に起きたポジティブなことは

・横内監督でJ1昇格。

・大卒選手のリクルートの質が上がっている。

だと思っています。

逆にネガティブなことは

・昇格年の2024シーズンにトップチームの人件費をJ1中位レベルで投資したのに降格した。

・直接見て獲ってきたと思われる外国籍助っ人が想定以上に活躍しなかった。

・ユース強化のためにと連れてきた安間監督をあっさりとトップに引き抜く。

・ジョンで土台はできたと言いながら、その土台が存在しないフットボールを許容する。

他にもありそうですが、パッと思いついただけでもこれくらい個人的にネガティブに感じていることがあります。

藤田SDは強化部で一番影響力があり、今後の磐田を強くするための存在です。

監督や選手は去ってしまいますが、基本的に長くやってもらおうというポジションだと思っています。

しかし、実績を考えると、果たしてこの人に任せていいのか?というとてつもない不安があります。

磐田黄金期のメンバーで、もしかしたら外からではわからないいることでとてつもない意味があるというのもあるのかもしれません。

しかし、そういったことがあったとしても、目標には到底及ばず、かつチーム強化の積み上げも感じないで終わってしまった今シーズン。

この状況で、今後も任せるに値するかは非常に疑問があります。

 

雑感

POに負けた後に襲ってきたのは、悔しさよりも虚無感でした。

安間監督になってから、試合内容は面白くないとXでは毎回のように言っていましたが、勝つことで虚無感をオブラートに包んでいたのだなと気づきました。

私は勝敗はコントロールできないと考えています。

私はレアルマドリードが好きなのですが、リーガでは圧倒的にトップチームの人件費が高いのに、バルセロナアトレティコマドリードといったチーム以外にも勝てないことが全然あります。

ときには内容もふがいないです。

レアルマドリードでさえコントロールできないものを磐田ができるわけがありません。

確かに内容が酷くても、勝てば嬉しかったり、幸せな気持ちになることはリーグ終盤に味わいました。

しかし、POの敗戦で、結果でいろいろと見えていなかった(見ようとしていなかった)と思いました。

カテゴリーは大事だとは思いますが、J1に上がって、全然勝てずに降格するシーズンを見たいかと言えば全く見たくないです。

それよりも、選手たちが躍動し、結果以外で語る部分が多いチームを見たいです。

そういうチームが結果的に昇格したり、J1でタイトルを獲得できれば最高だと思います。

<おわり>