天皇杯の敗戦から考えるジュビロ磐田

残念なことに天皇杯2回戦の相模原戦に負けてしまった。

2回戦ではあるが、磐田にとっては初戦であり、昨シーズンに続いて天皇杯は1回しか戦うことができなかった。

結果だけを見れば、下のカテゴリーに負けて、いわゆるジャイアントキリング(ジャイキリ)をされたという試合である。

当然上のカテゴリーにいるものとしては勝たないといけなかったとは思うが、同時に客観的に見たときにこれはジャイキリが起きたと言っていいのかとも思った。

(磐田のクラブ事情知らずにあーだこーだ言っている意見に軽くイラっとした)

負けた言い訳をするのではなく、なぜこういうことが起き、今回起きたことをどう考えたらいいのかをできるだけポジティブに考えたい。

磐田のクラブ事情

過密日程

磐田の5/31の大宮戦からのスケジュールは以下の通り。

日付 対戦相手 中日数
5/31 大宮 中5日
6/4 A湘南 中3日
6/8 H湘南 中3日
6/11 相模原 中2日
6/15 愛媛 中3日

ルヴァンを勝ち上がったことで、非常に厳しい日程になっているのがわかる。

仮にルヴァンがなかったら、大宮戦から中10日というスケジュールだった。

愛媛戦が中3日控えているので、フルスタメンということはなかっただろうけど、少なくとも休養十分な選手たちを起用できた可能性が高い。

強調しておきたいのはルヴァンはない方がよかったとかそういうことを言いたいのではない。

事実として、選手たちは厳しい日程を戦っていたということだ。

 

怪我人

磐田は不運なことにボランチの選手に怪我人が集中しており、今シーズン本職としてこのポジションをやっていた選手が2人(上原、金子)という状況になっている。

ボランチは、開幕時は選手が多すぎると思われていたポジション。

以下が開幕時にボランチとして考えられた選手(開幕後の起用法は無視)。

金子大毅 上原力也 レオ ゴメス 中村駿 川合徳孟 相田勇樹 藤原健介 植村洋斗

これだけいたら足りなくなるということは全く想像できず、逆にどう選手を整理していくのだろうと思っていた。

しかし現状は以下の通り。

選手名 特記事項
金子大毅 💪健康
上原力也 💪健康
川合徳孟 💪健康
中村駿 🤕ケガ
相田勇樹 🤕ケガ
植村洋斗 🤕ケガ
レオ ゴメス 🔄完全移籍
藤原健介 🔄育成型期限付き移籍

川合は今シーズン2列目がメインで使われているので、ボランチメインで稼働していて健康なのは上原と金子の2人のみ。

この状況で天皇杯の相模原戦に突入したのだ。

 

天皇杯 相模原戦

過密日程真っ只中で、中3日で愛媛戦があることを考えると、主力選手はできるだけ温存したい(というかしなければならい)状況。

そんな状況で、ジョンが選択したメンバーが以下の通り。

ポジション 選手名
先発メンバー
GK 西澤翼
DF 森岡
DF 西久保駿介
DF 川口尚紀
DF 👨‍🎓甲斐佑蒼
MF 川崎一輝
MF 川合徳孟
MF 👨‍🎓石塚蓮歩
MF 👨‍🎓西岡健斗
FW 渡邉りょう
FW マテウスペイショット
控えメンバー
GK 川島永嗣
DF 松原后
DF 江崎巧朗
DF 👨‍🎓小澤有悟
DF 👨‍🎓森島皐雅
MF 角昂志郎
MF 👨‍🎓高澤海志
MF 倍井謙
FW 佐藤凌我

メンバーの20人中6人がアカデミーの選手で、スタメンに3人も抜擢するというかなり大胆な起用である。

懸念されたボランチは川合と2種登録すらされていない現役高校2年生の西岡という組み合わせ。

前回のブログで引用した記事にジョンは少数スカッドで、アカデミーの選手をうまく活用していきたいと語っていた。

トップチームの怪我人事情があるとはいえ、それをまさに有言実行した。

しかし、結果はご存知の通り、敗戦となってしまった。

現地観戦していたであろう人の感想をいくつか読んだ印象としては、アカデミーの選手のパフォーマンスはよく、チームとしてもそこまで悪くなかったようだが、負けてしまったようだ。

こればかりは試合を見る術がないので、確認のしようがない。

ただ、ジョンいわく、アカデミーの選手はよく頑張ったが、交代で入った選手たちがパワーを注入できなかったらしい。

後半のパフォーマンスは不満があったようだ。

今日はグループ全体が全く良くなかったです。立ち上がりからアカデミーの選手たちはよくやってくれました。ただアカデミーの選手を3人替えたところでゲームが崩れてしまい、難しい試合になってしまったと思います。
ここでの会見で何度も言ってきている通り、僕の中で最優先の原則はハードワークです。ただそれが後半は全くできていませんでした。交代で入っていく選手たちをゲームチェンジャーと呼んでいますが、その選手たちが何もできませんでしたし、言い訳はできませんが、ファンとクラブに申し訳なく思っています。ここからトレーニングに戻ってハードワークして、J2で結果を出せるようにしていきます。

――ジュビロ磐田U-18の選手を3人起用し、彼らはそれぞれ持ち味を発揮したように感じています。彼らのプレーをどのように評価していますか?
そこが今日、唯一のポジティブな点だったと思っています。3人のパフォーマンスは素晴らしかったです。これはアカデミーグループとして、アカデミーのコーチや全ての選手が賞賛されるべきものだと思っています。
ただその3人が交代し、試合がネガティブな方に進んでしまったことはトップチームグループとして許されることではないと思っています。
(石塚)蓮歩はいろんな動きが入り始めてからすごく良くなっていきましたし、(甲斐)佑蒼もディフェンスのところで力強くやって、いろんなパスを出したところもすごく良かったです。(西岡)健斗に関しても16歳であれだけやれましたし、(出場した)60分間までの段階ではピッチの中でベストな選手だったと思っています。

引用元:天皇杯2回戦 vs. SC相模原 | 試合日程・結果 | ジュビロ磐田 Jubilo IWATA

 

なぜハードワークできなかったのか

以下の表は大宮戦から相模原戦までの選手の各試合の出場時間と合計時間である。

ポジション 選手名 大宮 A 湘南 H 湘南 相模原 合計
GK 川島永嗣 90 0 90 0 180
GK 阿部航斗 0 90 0 0 90
GK 西澤翼 0 0 0 90 90
CB リカルド・グラッサ 90 36 88 0 214
CB 江崎巧朗 90 0 90 20 200
CB 森岡 0 90 2 90 182
CB 甲斐佑蒼 0 0 0 70 70
CB 上夷克典 0 50 0 0 50
SB 川口尚紀 30 90 2 90 212
SB 松原后 90 0 90 17 197
SB 為田大貴 60 45 88 0 193
SB 西久保駿介 0 45 0 90 135
SB 吉村瑠晟 0 45 0 0 45
DMF 上原力也 90 57 90 0 237
DMF 金子大毅 60 90 73 0 223
DMF 中村駿 30 33 0 0 63
DMF 西岡健斗 0 0 0 75 75
OMF 角昂志郎 79 45 62 45 231
OMF 倍井謙 79 10 90 30 209
OMF 川合徳孟 11 90 17 90 208
OMF 川崎一輝 11 80 17 90 198
OMF 石塚蓮歩 0 0 0 60 60
FW 佐藤凌我 71 0 73 30 174
FW ペイショット 19 54 28 60 161
FW 渡邉りょう 0 0 0 45 45

これを見るとわかるが、直近のH湘南戦に出ていない、もしくは出場時間が少ない選手+アカデミーの選手でスタメンは構成されている。

ジョンが期待したゲームチェンジャーの控えメンバーは長い時間H湘南戦に出ている。

つまり、疲労の残る選手たち。

中2日でプレーすることは、Jリーグに限らず多くのリーグで監督や選手から不満が漏れてくる。

それくらい当事者からすると、ありえない日程なのだ。

中2日でプレーすることに関して、町田の岡村がこう語っている。

28歳の岡村大八は、中2日との違いを問われて「それはもう、全然違いますよ」と声を張った。

(中略)

「試合の疲労で筋肉痛が起きても中3日あったら、だいたい取れる。でも中2日だったら取れない。次戦がアウェーなら、その状態で移動しなければならないのでメンタル的にも違いは大きい」

引用元:つらすぎる「中2日」試合をJ1で唯一回避した 町田ゼルビアの信念と強運 実は「小さくない代償」もあって:東京新聞デジタル

ジョンも当然そこは理解していると思うし、ここでアカデミーの選手も含めてあまり良くなかったなど言えるわけもない。

ただ、現実的にハードワークが難しい選手を起用しないといけない状況にあったのだ。

磐田の勝ち筋としては、スタートのメンバーで2‐0など2点差以上のスコアにして、交代選手でアカデミーの選手を起用できる、もしくはハードワークをそこまでしなくてもいい(ボールを保持して逃げ切ればOK)という状況に持ち込むことだったのかなと思う。

 

今後の課題

磐田が今後本当に少数スカッドで基本的に戦い、足りなくなったらアカデミーの選手を活用するとなれば、トップチームのコンセプトを明確にし、アカデミーの選手は最低限のことは身に付いているという状況にならなければならない。

今であればハードワークは必須で、例えばCBであればボールの配球力や運ぶ能力も求められる。

各ポジションによって必要される技術や個人戦術があるだろう。

これが繋がっていないと、トップチームでは相手をよく見て判断しプレーをすることを求められるのにアカデミーではロングボールや縦パスばかりを要求されてしまう(オープンになりやすいスタイル)というミスマッチな状況になる可能性もある。

また、若手選手を積極的に起用するという文化的土壌も必要だ。

近年は後藤啓介や今シーズンの川合徳孟といった1年目にしてリーグ戦で活躍する選手が出ているが、なかなか起用されない若手選手も多く見てきた。

彼らが後藤啓介や川合徳孟より大きく劣っていたかというそんなこともないと思う。

結局、使ってくれる監督に出会うかという運の部分になってしまう。

監督人事は当然選手が全くコントロールできない部分なので、クラブとして若手はどんどん起用してほしいという文化にしていかないといけない。

それはいつの日かジョンが去ったとしても残っていないといけない。

今回の天皇杯のように怪我人が多いからとか、過密日程だからとかそういう事情がなくとも、アカデミーの選手が抜擢されて、若手にチャンスを与えるクラブになっていかないと少数スカッドで今シーズンのような過密日程があった際に全てを勝ち取ることは難しいだろう。

 

まとめ

現場の人間はプロなのだからどんな状況であろうと結果を出そうとするし、日程を言い訳にすることもほとんどない。

勝ったタイミングや監督が代表して苦言することはあるが、基本的に言い訳をしないということが多い。

とはいえ、見る側も同じように「プロなんだからとにかく結果で示せ!!」という姿勢がいいのかは個人的に疑問に思っている。

(だから、今回のような記事を書いたわけだが)

別にブーイングするなとか、ネガティブなことは絶対するなとかそういうことではなく、現実的に磐田はこんな状況で戦っていますよと。

柏vs東洋大学の試合を見たが、J1で上位を走る柏でもサブメンバーが中心になるとかなり難しそうであった。

そこに大学関東一部を戦うチームが主力メンバーで挑んでくるのだから、簡単ではない。

フットボールはチームスポーツなので、普段あまりやっていない組み合わせになるだけでパフォーマンスが大きく変わるスポーツである(磐田でいえばA湘南戦)。

相模原戦でいえば、スタメンの組み合わせも変わり、疲れた選手を交代選手として使わないといけない状況であった。

長々書いてきたが、とにかく言いたかったのは「めっちゃ大変な状況で試合をしていた」ということだ。

それを訴えたいために記事を書いたのでした。

<おわり>